「天井部材の落下対策加速/文科省/工期短縮でモデル実証」が建設通信新聞に掲載されました
天井部材の落下対策加速/文科省/工期短縮でモデル実証
文部科学省は、2013年度から公立学校の屋内運動場・武道場・屋内プール・講堂の天井など非構造部材の落下防止対策加速化事業に新規着手する。施設や地域の特性を踏まえた対策手法を検討し、技術的な留意点を整理したり対策工事の工期短縮手法を開発するモデル実証を自治体に委託する「先導的開発事業」と、一級建築士などの建築構造技術者を対象に講習会を実施し、修了者を『専門的技術者』として登録したデータバンクを構築、全国の自治体に活用してもらう「専門的技術者養成」の2つで構成する。
先導的開発事業は、▽専門的技術者も含めた実施体制となる協議会を設け、天井調査、対策検討、設計・積算、工期短縮手法開発を伴う工事まで実施する「モデル実証1」▽工事段階を除いた「モデル実証2」ーーの2つの実証がある。児童生徒の安全確保や応急避難場所機能、地震後の教育活動早期回復など学校施設の特性と、架構種別や屋根構面の形態、天井形状など施設そのものの特性を踏まえ、協議会で課題と対応策を整理する。これに加え実証1では、点検から設計、工事を通じて多くの工種にわたる対策手法の工期短縮法を開発する。
実証2は北海道・東北、関東、九州・沖縄の3地域が各3件、東海・北陸、近畿、中国・四国の3地域が各2件の計15件、実証1は全国で8件をそれぞれ実施する。
自治体の公募は予算の成立を条件に3月中にも始める。委託事業のため、経費は全額補助される。実証2の終了後、自治体が対策工事を実施する際は既存の補助制度を使う。補助率は3分の1だが、交付税措置によって自治体の実質負担は13.3%で済む。
文科省は、先導的開発事業の成果を反映させ、14年3月に既存の非構造部材耐震化ガイドブックと非構造部材耐震対策事例集を改定する。
先導的開発に2億円、技術者養成に217万円を13年度予算案に計上した。昨年9月に約5億円を概算要求した、講習修了技術者を都道府県の教育委員会に派遣し、市町村からの要請に応じて施設を調べる事業は、先導的開発事業に組み替えた。
今春に養成講座⁄専門的技術者⁄200人程度登録
一方、天井などの落下防止対策の専門的な知見を持つ技術者養成講習会を、今春に全国5会場で開く。専門的技術者は200人程度の登録を見込む。登録された技術者を自治体が積極的に活用し、点検を13年度末までに終え、落下防止対策を15年度までに完了することを目指す。
文科省として点検への財政措置はないものの、総務省が特別交付税によって、公立学校の屋内運動場や防災拠点となる公立社会教育施設・体育施設、文化施設の点検経費を13年度から新規で措置する。
市町村には施設担当の技術職員が少なく、構造体の耐震対策に比べ非構造部材の点検・対策は遅れている。公立小中学校の非構造部材の耐震対策実施率は、12年4月時点で32%にとどまる。文科省は技事業を通じ安全性を確保し、防災機能を強化していく。
(2013年2月6日 : 建設通信新聞)