「天井耐震化促進へJACCAの取り組み」が鉄鋼新聞に掲載されました
「天井耐震化」促進へ〜JACCAの取り組み〜
「安全」「BCP」呼び掛け
建材薄板内需の喚起期待
東日本大震災は、「天井」に対する認識が変わるきっかけになった。
天井だけが崩落
被災地では、地震の揺れによって建物や工場、事務所の天井落下事故が数多く発生。実際、ホール天井の崩落で尊い人命が奪われる惨事も起きた。
阪神淡路大震災以降、建物に対する耐震化への社会的関心が高まり、基礎や躯体部分を耐震仕様とする工事が、主に学校や病院をはじめ全国的に進む。その一方で天井については「構造体ではない(非構造部材だから)」という認識と位置付けによって耐震化が遅れている。
これまでは、天井が落下するような大規模災害の時には、建物そのものが倒壊するケースが多く、根本的には「建物の構造躯体上の問題」とみなされるケースも多かった。
しかし、東日本大震災では、耐震仕様を施された躯体は倒壊せずに天井だけが落下するという被害事例がいくつも報告され、天井の耐震性能の脆弱さと耐震化の遅れの実態が明らかになる。
専門の人材育成
天井の耐震化を推進する全国団体、日本耐震天井施工協同組合(JACCA)によると、震災から半年以上が経過した現在、天井の「耐震化」に対する世間の関心は「明らかに高まっている」。国や県の行政機関はもちろん、民間企業からも天井に関する問い合わせが多く寄せられており、問題解決の支援を依頼されるという。天井にも「耐震化が急務」との意識が台頭している証だ。
JACCAは、天井施工に関わる全国の内装工事店500社以上が加盟する国土交通省の認可団体。長年にわたって「天井耐震化」の重要性の啓発および促進を、組合事業活動を通じて地道に取り組んできた。
「天井の耐震診断」は、中核的な業務のひとつ。たとえ外観は損傷がなくても、天井裏ではパーツの緩みやハズレなどによって「いつ落下事故が起こるか」といった危険が潜む。にもかかわらず「構造部材ではない」天井を診断できる専門技術者がいない。
そこで「天井耐震診断士」の育成に力を注いでいる。
「天井耐震診断士」は国家資格を持った建築士などを対象に天井の耐震化に特化した講習会を開催し、修了者には「認定証」を発行。耐震の精度を天井裏等で確認・診断する。
さらに耐震天井施工研修会を全国各地で実施。耐震天井を施工する上で必要な知識と技術を組合員企業に所属する施工管理者や実施工者に、理論解説と施工の実践研修を通じて耐震施工技術者として認定(有効期間3年間)する。
「落下しない」保証
安全性と技術力の両立を促進しつつ、組合員企業が施工した耐震天井の安全性をJACCAが保証するのが「耐震天井保証制度」だ。「地震後も建物内の機能を維持できる」ことを前提に、最長30年間の長期保証(保証書発行手数料1万円)に対応する。
東日本大震災では天井落下事故によって企業の生産活動が停止した事例も多かった。BCP(事業継続計画)の観点からも「この機に『耐震天井保証制度』の採用を前向きに検討してほしい」と呼び掛ける。ちなみに、これまでJACCAが保証した耐震天井で落下した事例は「1件もない」とのこと。
都内で「総代会」
きょう24日にはJACCAの総代会が帝国ホテルで開催され、全国から業界の名士40余人が集結。併せて耐震天井に関するセミナーも行われる。「社会貢献の機会到来」に意気を感じ、業界ステータスの向上にもつなげようとの志気も高いだけに、今年の総代会は昨年以上に活気を帯びるだろう。
また、天井を構成する重要な資材のひとつが、鋼製下地材と呼ばれるロールフォーミング製品。建材薄板の代表的な分野であり、耐震天井専用部材としての潜在需要から日本の天井を安心・安全なものへと切り替えていくことを通じて薄板内需の喚起に寄与するかもしれない。
(2011年11月24日 鉄鋼新聞)
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